宇宙とネコ。

宇宙とネコ。

 私がそのCDを拾ったのは、偶然だった。教師でさえあまり入らない旧校舎の、化学実験室という札が掲げられた教室。たった一枚、机に置かれていた。
 そのCDにはとある音声が録音されていた。CDだから当然だって? いや、そこに入ってるのは音楽ではなく。
「……世界の真実を知りたいかい?」
 そういう声が、冒頭のトラックに入っていた。それは少年の声。カッコいいというよりは可愛い部類の声。私はそのまま聴く。彼はこの世界、いやこの宇宙の成り立つ仕組みを永遠と語り続けた。そして途中途中で、こう勧誘してくる。
「キミもこの宇宙の維持に力を貸してくれないかな」
 それはまるで、自分に訊いているかのようだった。でもある意味独善的で、恐い。そのまま私はCDを聴き続けた。
 そして最後のトラック。
「最後まで聞いてくれるなんて珍しいね。そんなキミの許に、ボクは行く。キミには選択する自由があるよ、契約するかしないかの。でも折角だから契約してほしいな」
 そしてふと顔を上げると、何かがそこにいた。
「気付いたかい?」
「……あなたは?」
「みんなからは『キュゥべぇ』と呼ばれてるよ」
 その白い、ネコみたいな生き物は、まるでツインテールのようなものを耳から垂らしたそれは、話しかけてきた。
「ボクはキミの願いを一つだけ叶えて、魔法少女にすることが出来んだ」
「それが宇宙を維持するための?」
 その『キュゥべぇ』とやらは質問に答えず、
「だからボクと契約して、魔法少女になってほしいんだ」
ただそれだけを言ってきた。嘘は言われてない、けど真実も判らない。そう感じた。まさに独善的だ。
「悪いけど、興味はないかな」
「そうかい? ならここでさよならだ」
 彼は、去っていった。