机上詩同好会(ショートショート版)
〈第2幕〉
また別の日のこと。
「ねぇ、この詩いいことない?」
彼女が言ってきた。俺は机の上に書かれたその詩を読んでみる。
どうして あなたは
旅立ってゆくの?
別れなんて
なければいい
なかったら
悲しまずに済むから
「俺は、この詩に付け足したくなるな。」そう言うと、
「じゃあ、付け足してよ」彼女はそう言ってきた。
けれど 旅立つ時はきっとくる
旅立った後にまた 人と巡り逢う
まるで水を抜いて また水を入れ始めた水槽のように
限界量はあるけど、たくさんの人に出逢えるよ
「へぇーすごいね」彼女はそう言ってきた。そして
「実はこの詩、私が書いたんだ」
「え?」訳が わからなくなっていた。
「私が思ってることそのままなんだよ。」
彼女はクラリネットをかばんから出して組み立てた。
「吹くの?」「うん」
彼女のクラリネットの音色は、心に染みる、そんな感じ。
ここは机上詩同好会、部員二名。机に落書きされた詩を評価するのが活動内容。
「そういえば、」
彼女は突然切り出した。
「私、そろそろ寿命かな」