裁き[改訂版]

裁き[改訂版]

 少年は、呟く。
「……次は誰が来るんだろう?」
 周りには染み一つない、真っ白な空間。その中に小柄な少年が独り、身の丈程もある大剣を手に、立っている。
「ま、ボクが全部倒しちゃうけどね」
 その言葉を発すると同時に、突如その空間が歪んだ。
「あ、来たみたい。まあいいや、相手してあげよ」
 少し微笑みながら、少年は再び呟く。彼は一度も負けた事、いや傷ついた事さえなかった。どんな敵に対しても一撃必殺の技で、「殺した」。
「ようこそ、二百十三万二千百五十九人目の挑戦者さん」
 どうせ、すぐに終わってしまうけど。少年はそう思っていた。相手は白いブラウスを着た少女。こんなかよわそうな女、どうしてこんな所に来たんだ? そうも少年は思っていた。
「君が、」
 少女が発する言葉は、少年を驚かせる。
「『アキ』くんだね。ずっと、君に会えるのを待っていたよ」
「え……どうして僕の名を───うっ」
 少女は自分の名前を唐突に言われ驚いている少年の隙を狙い、腹部へと飛び蹴りを食らわせた。不意を突かれ少年はまともにその攻撃を食らい、血を吐く。
「ボ……ボクに攻撃をしたな……」
 少年は怒っていた。すぐに少女に向け剣を振りかざす。間合い・速度・力加減とも全て完璧で、いつもだったら命中して(しんで)いるのに、振り返ると「挑戦者」たる少女は何事もなかったかのように、立っていた。最初と表情一つ変えず。
「な、なんだって……ボクの攻撃が外れるなんて……」
 少年が呟くと、少女は左手を少しだけ上げる。手のひらにはどこからか、光の球が生まれ大きくなっていく。
「自己の力を過信した愚か者よ。今までこの世から欠けさせた二百十三万二千百五十八余の報いを、そして天の報いを受けるがいい……」
 少女は左手にできた大きな光の球を、ボールを投げるようにして少年へと向ける。咄嗟に少年は剣を盾にするがその剣をも「透過」し、少年に当たると同時に焼き尽くす。
「え……あなたはもしかして───」
 少年の言葉は、最後まで届かず消えた。少女はため息をつき、目を瞑る。
「このような者を再び生まないよう、しっかりとこの世を監視しておかなければなりませんね。まあ、なかなか大変な事なんですが」
 少女は呟き、そして消えた。真っ白な空間には剣だけが残される。
 しかし主を無くした空間は、そのうちに消えた。