美少女の前で。

「──というのが、セーラさんとの出来事です」
 とあるホテルの一室。僕は「警視庁公安部」と名乗る男に呼び出され、洗いざらい、海部セーラのことについて聞き出された。協力しなければ強硬手段に出る可能性もあると聞かされたら、話すしかなかった。
「彼女は僕の命の恩人です。そんな彼女が警察に追われるなんて、何をしたんですか」
 男に聞くが、答えはない。

 しかし、僕は一つだけ、この男に話していないことがある。それは名古屋に戻って別れ際に少女が話した、あのこと。

「世界は知らないところで変わってゆくわ。そして、私がその当事者の一人になるらしいの。そんなこと、望んでないのだけど」

 そして僕は、こう返したのだ。
「その時は僕が、君を助けるよ」
 あの時以来少女には会っていないけれども、僕は誓ったのだ、彼女を助けると。

 誓ったのだ、美少女の前で。

おわり