机上詩同好会

断章b・運命

 日々は過ぎ、冬休みに入った。その休み中少女は体調を崩し、病院へ行く。一通りの診察が終わると少女だけが診察室から出され、待合室で両親が戻ってくるのを待つことになった。
 さすがに少女も高校生、それを不審に思わない訳がない。前々から両親は何かを隠すような素振りを見せていたこともあり、あの、何となく感じた予感──自分はそろそろ寿命なのではないか──がますます現実味を帯びてきたように、少女は感じたのだった。
 そんな少女の予感通り、診察室で医師は両親に語る。
「娘さんのかかっているのは珍しい病気で、そのせいで治療法すら確立されていないのはご存じでしたね。実は、その病気の末期状態に彼女は差し掛かっているのですよ。ただ、それでも自覚症状はほとんどありません。本当に、眠るように死んでしまう病気といってもいいでしょう」
「正直、余命はどれくらいなのですか……」
少女の父親が聞くと、医師は机に置かれたパソコンを操作し少女の電子カルテを表示したあと、しばらく考えて
「あと──数ヵ月と言った所でしょうか」
ある意味残酷な言葉を口にする。母親は身体中の力が抜けたかのように、床へと崩れ落ちた。父親も、悔しさで震える。何故自分の娘がそんな目に遭わなければならないのか、そして何て運命というものは残酷なんだ、と。しばらく沈黙が支配した後
「このことを、娘に話すべきでしょうか……」
父親は自問自答するように呟いた。目の前の人物が適切な答えをくれるのではないか、と一抹の期待さえ抱いていたが、しかし
「それは、あなたたちの決めることですよ。どんな結果になろうと、後悔しないように」
明確な回答は出されない。しかもその言葉が、現実逃避したい両親の首を、内側から、じわじわと絞めていく。