キミの隣にある組織。

プロローグ

「同志マスカレード」
 若い男の声が別の人間を呼ぶ。
「へぇ何で、同志クローザー」
 ドスの効いた声を返すのは小太りの男。
「この県で、計画を実行するのは無謀だな。厄介な相手がいる」
「厄介な相手って何で」
「伝説の子ども警察官だ」
「けど子ども警察官ですぜ? この街にはいないはずだってよ」
「本部に転属しているんだ。奴らが厄介で、表だった行動すらしてないのにもう気配を勘ぐられて捜査が始まってるしな。県警に情報筋がいなけりゃ、俺だって捕まらない自信は、ない」
「そなんすか」
「だからこの街では無理だ」
「へぇ……じゃあ、神奈川とかどうすか。貸しがある奴がいるんで」
「神奈川か……いいかもな。地図買ってこいよ。盗むな、足がつく……ほらよ」
「へぇ」
 金を受け取り小太りの男が走って行くがすぐに戻ってくる。脇にはA4サイズくらいの紙袋を持っている。それを受け取った眼鏡の男が袋を開け、「神奈川県道路地図」と表紙に書かれた冊子を取り出す。
「で、当てがあるのは何処の街だ?」
「んと、蛯尾浜というとこで」
「エビオハマね……」
 眼鏡の男は地図の最初のページを開ける。その後もパラパラとページをめくり
「最高の街じゃないか。ある程度海に近くて警察署もない。よし、この街に決定だ。構成員に連絡しろ」
「へぇ、了解です」
 その二人を柱越しに見張る、二つの影があった。
「警備部公安第一課、応答せよ」
 少し髪の長い、現代風の少年が学生服の左袖を口に近づけ話している。早すぎる冬服の長袖の内にはマイクが仕込まれている。右手にはコードが繋がった携帯電話らしきものを持っている。横には同じく冬服のセーラー服を着た、髪先がカールしていてギリギリ肩にかかるかかからないかという長さの少女。白襟と、スカートの白線が特徴的な某高校の制服である。二人とも胸ポケットには「CP」の文字がデザインされたバッジを付けている。
『公安一課だが何の用か、どうぞ』
 二人が左耳に付けているイヤホンから声がした。
「こちら地域部子ども課準備室の藤枝、A三七二八事案のマル対を発見。どうぞ」
『了解、場所は、どうぞ』
「中区栄、名鉄栄町駅の西側にある地下街の、地上吹き抜け付近。どうぞ」
『了解。至急公安課員を向かわせる。以上公安一課』

(CP2より)