小説書きの執筆小話。

何がきっかけで小説を書き始めましたか

 私が小説を書くのを始めたのは、もうかれこれ十年以上前になりますか。よくある質問として「何がきっかけで小説を書き始めましたか」というのがあると思います。はっきり覚えていない人も多いとは思いますが、自分はこれ、とはっきり言うことができます。

 「輝石」。それがすべての始まりでした。

 この「輝石」というのは、一般的には鉱物のひとつに分類されます。試しに、今執筆しているPCに入っている『スーパー大辞林』で引いてみると「鉄・マグネシウム・カルシウムなどのケイ酸塩鉱物。斜方晶系と単斜晶系とがある。火成岩変成岩を構成する主要鉱物。」と出てきます。なるほど、よくわかりません。しかし中学校の理科でも「輝石」というものは出てきて、写真が教科書や理科便覧に載っていたのでなんとなく、イメージはできると思います。
 さて、私がいう「輝石」は、そんな鉱物としての輝石ではなく、小説集の名前だったりします。
 中学一年生の秋、文化祭。今は教師主催の文化祭になってしまったようですが、自分が中学生の頃は生徒主導・クラスや部活動・さらには有志単位で色々な出し物をする、まさにお祭りでした。そんな折出会ったのが、この『輝石』というタイトルがつけられた小説集です。
 上下巻に分かれたB5サイズの冊子。三段組みで、小説は六篇だったかな。世界を救うために秘密組織へ入って戦う話、異世界へ行ってお姫様になる話、鏡に関わるホラー系の話、芥川龍之介「トロッコ」「蜘蛛の糸」をモチーフにした話、旅館で起こる怪談話、そして魔法使いの話、と。冊子自体はボロボロになるまで読み込んで、その後クリアファイルに入れて保存してあります。ファイルを取り出して読み返すことは簡単なのですが、執筆の都合により記憶にてお届けしました。
 この『輝石』という小説集、当然ながら収録されているものは全て中学生、厳密には当時の中学三年生が書いたものです。この小説を読んで、自分は思いました。「中学生でも、こんな小説が書けるのか」と。そしてこうも思いました。「なら、自分にも書けるのではないか」と。あれですね、中二病とはよく言ったものです。
 そんな経験があって初めて書いた小説は、小学生の頃から続いていた「妄想の世界」に、田上健次という男が迷い込む話です。タイトルまでは書きません、さすがに恥ずかしすぎるので。しかし第一の原点はここにあり、とはっきり言えます。この作品がなければ、小学生の頃からの妄想癖がなければ、小説を書き始めるなんてこと、しなかったですから。
 そして自分もその後、『輝石』の先輩方と同じ形で小説を書くことになるのですが、その話は第二話にて。